「マウイマラソン&サーフィン、そしてWANA(バナ)。」 ハワイ旅行日記2010年9月。 

滞在2日目



目が覚めたので時計を見ると、まだ寝ている予定の時間だった。
ムリヤリ目を閉じて寝ることにした。

もう一度目が覚めたので時計を見ると、ちょっと早いけれどこのまま起きてもいいと思える時間だった。

外を見ると闇の中である。
それはそうだ。
夜中なのだ。

今日はマウイマラソンの日である。
スタートは5時30分。
スタート地点までバスに乗っていく。
バスはマラソンのコースを逆に走っていく。
出発と到着の地点が違うのはマラソンには珍しい。
マウイ島をカフルイ空港からウエストマウイまで走っていくのだ。

バスは3時から走っていて、これに乗らないとスタート地点まではいけない。
HISなどの旅行代理店のパッケージツアーの場合は、スタート地点までマウイマラソン側で用意したバスではなく、独自に運行するバスを使ってスタート地点まで運ばれる。
なんらかのトラブルが発生しないようにしているのだろうか。

さて、朝食を食べよう。
朝食のメニューは昨日のプレートランチの残り(笑)とドーナツである。
初めてマウイマラソンを走るときの朝食は、真空パックに入ったごはんにごま塩をかけたものとバナナだった。
炭水化物をたくさんとるということで、日本から真空パックのごはんを持っていったのだ。
そのときはコンドミニアムだったので、電子レンジがあり温めることができた。

今回は3回目なので少々キモチに余裕がある。
現地調達でプレートランチのごはんで炭水化物の摂取をする。
おかずも残しているので、それも一緒に食べる。
バーベキューミックスのお肉やフライをタルタルソースにつけて食べる。
悪くはないのだが、マラソン前に食べるにはちょっと味付けがヘビーな気がする。
ごはんにふりかけくらいでいいのかもしれない。

食後にコーヒーを淹れてドーナツ2個食べた。
ドーナツも炭水化物なのでちょうどいい。

どちらにしても深夜2時すぎに食べるモノではない。(笑)

ハワイ産のジュースとミネラルウォーターを飲む。
ある程度の水分をカラダに入れておく必要がある。
特にマウイマラソンは水分の摂取を怠ると、脱水症状になるなど大変なことになる。
日本でのトレーニングで真夏の暑さの中を走っているのでカラダはそれなりに対応できると思うが、水分という重要な要素がなければ倒れてしまうだろう。

出すものを出すことも重要だ。
マラソン中にもよおすと面倒である。
スタート地点にたくさんの簡易トイレがあるが、そこで大きいほうをしたくはない。
簡易トイレは、出た瞬間、おつりが帰ってきそうな作りなのだ。(食事中にごらんになっている方、すみません)
ホテルで済ますことができればそれに越したことはない。

そろそろ着替えよう。
足と股にワセリンを塗る。
特に指先あたりと足の裏にはたっぷりと塗る。
マラソン中に摩擦などでマメができたら痛くて大変だ。
僕はこのワセリン(とアシックスのシューズ)のおかげで、フルマラソンを走ってもマメができたことはない。
今回もマメを作らないで帰ってきたい。

日本でテストを重ねて厳選したウエアに着替える。(ちょっと大げさ。笑)
前回、黒っぽいウェアを着てしまい、暑い思いをした。
ハワイのような日差しの強いところでマラソンを走るのにダークな色のウェアを着てはいけない。

そのウェアにゼッケンを妻につけてもらう。
ウェストポーチをつけてゼッケンとウェストポーチが干渉しないか確認した。

ウェストポーチに入れるモノをセットする。
スポーツキャンディ(塩が入っているもの)とカロリーメイト(メープル味)、アミノバイタルスーパースポーツというゼリードリンクを2つ入れた。
ボトルを入れるところには日本から持ってきた330ミリリットルのミネラルウォーターボトルに粉のポカリスエットを入れミネラルウォーターを入れたものをセットした。
マウイマラソンはエイドステーションが充実していてドリンクに困らないのだが、後半になると充実しているエイドステーションでも間隔が長く感じてしまう場合がある。
そのときの緊急時対応として持っていくのだ。
また、エイドステーションのない場所でカロリーメイトを食べる時に口がぱさぱさしているのをポカリで流す場合も想定している。(エイドステーションが見えたら食べるのが良いと思っています。初めてのマウイマラソンの時、まったくエイドステーションのないところでカロリーメイトを食べたら口の中がぱさぱさしてしまい、大変だったことがあります)

緊急時の対応なので、ボトルサイズは大きくなくてもいいと思い、330ミリリットルのビッテルのボトルを用意した。

20ドル札とクレジットカードを財布から抜き取りポーチに入れる。
お金を持っていても、マウイマラソンのコースには売店なんてものはほとんどないので役に立たないと思うが、持っているだけでなんとなく安心する。
お守りのようなものである。

そして、今回はケータイを持っていく。
ゴールに到着する前に連絡をするのだ。
体調が万全ではないので、どれくらいの時間がかかるかわからない。
そんな中、ゴールで待っていてもらうのは申し訳ない。
ラハイナくらいで電話をして出てきてもらおうと思っている。

さて、そろそろ出かけるとしよう。

部屋のドアを開けると、人の気配はまったくなかった。

マウイマラソンのすごいところは、参加者が少ないところだ。
僕は日本のマラソン大会をフルマラソンで2回、ハーフマラソンで4回走っているが、マウイマラソンの参加者がもっとも少ない。
そんなマイナーなところが、僕のマニアゴコロをくすぐる。(笑)
エレベーターで1階に行くと、フロントに係の人がいるだけだ。
このホテルからマウイマラソンに参加するのは僕だけと思ってしまうくらい人がいない。

ハイアットからウェスティンの近くまで歩いていく。
空を見上げると、たくさんの星が輝いていた。
空気がキレイだからだろう。
日本の数倍の数が見える。

ハワイでは、サンセット後数時間で寝てしまう。
朝はうっすらと明るくなってきた頃に起きる。
そのため星がたくさん出ている空をみることがない。

マラソンコースになっているカアナパリ地区のメイン道路に出ると、たくさんのスクールバスが並んでいた。
このスクールバスに乗ってスタート地点までいく。

バスの乗車開始時間をちょっとすぎたくらいの時間に行ったからか、まだランナーは少なかった。


僕は並んでいるバスのイチバン前にあるバスのところへ歩いていった。
そこには見たことのある顔を発見した。
スポナビハワイのA−1(http://blog.sponavihawaii.com/a1/)さんだ。
以前にハレイワ・メトリック・センチュリーライドに参加したときに申し込みを受けていたのがスポナビハワイだった。
そこで初めてお会いした。
今回のハワイ旅行では、マウイマラソンとホノルルセンチュリーライドのダブル出場を予定していた。
自転車は日本から持っていく予定だったのだが、JALの無料運搬サービスの期間外となるため、自転車を持っていくには運送費がかかる。
その費用は自分が出せる許容額を超える高額だ。
現地で借りてもいいが、せっかくなので自分の自転車を持っていきたい。
レンタルをするにも費用がかかるし。

縁がなかったと思い、スッパリとホノルルセンチュリーライドの出場をやめることにした。

その話と、近況の話をしばらくしていた。
「ビジネスはどうなのか」というようなことである。

A−1さんは今回のマウイマラソンのサポートをしているので、その仕事に戻った。

バスの中に入る。
だれかと目が合えば挨拶くらいしようと思っていたが、社内が暗いし人が少ないので誰とも目が泡なった。
後ろの方から日本語が聞こえてきた。
スポナビハワイさんを利用したのだと思う。
その人をサポートするためにA−1さんがいたのだ。

僕は暗くてよく景色は見えないが、外をぼーっと見ていた。
緊張しているかと聞かれれば緊張していると答えるが、過去2回と比べると緊張はしていない方だと思う。
最初の時は初めてのフルマラソンでマウイマラソンも初めてだった。
申し込みもスクールバスで行くシステムもすべて英語のサイトで見て行動した。
バスの場所へも深夜にタクシーを手配して、ひとりで行った。
あのときの緊張に比べたら今回は慣れたモノだ。

そんなことを考えていたら、ドライバーからのアナウンスとともにバスが走り出した。
「ドライバーのXX(覚えていない)です。これからみなさんをマウイマラソンのスタート地点までお届けします。そこまでのドライブをお楽しみください」とリズム感のあるイントネーションで話した。

日本のディーゼルエンジンより力強いエンジン音が社内に響きわたる。
ぐいぐいスピードを上げていく。
ちょっと運転が荒いかな。

道路を見るとマウイマラソン用に走る場所を確保するためのパイロンがおいてある。
深夜の作業、ありがとう。

空を見ると、たくさんの星が見える。
天気は問題なさそうだ。

ふと、前の人が僕の方を向いて「ハロー」という。
僕も、「は、はろー」という。
突然だったので、なにも話しをすることができなかった。(笑)

英語で話しかけるときは、話しかけるというアクションを前もってしてもらわないとココロの準備ができない。
まだ、アタマは日本語に支配されているのだから、英語を話す時は切り替える必要がある。

前の人は斜めを向いてバナナを食べていた。

次に話しかけられたら、「どこから来たのですか?」くらいは言おうと決心した。(その機会はありませんでしたが)

見覚えのある建物に併設されているパーキングの横のバスが止まった。
スタート地点に着いたのだ。

僕の乗ったバスは何番目かわからないが、早いほうだというのがその場にいる人の数でわかる。

僕はまず、トイレに行った。
ここからスタートまで定期的にトイレに行くつもりだ。
スタート後にトイレに行くのは時間がもったいない。

トイレに行ったあと、パーキングの端っこにある大きなブロックに腰をかけた。
スタート前に水分を補給するために持ってきたポカリを飲む。
トイレに行って余分な水分を出すが、走るときはカラダに蓄えられている水分はカラダに入れておくのだ。

なんとなく落ち着かないので、ぶらぶらと散歩することにした。



「あれ、なんか見覚えのある顔だ」と思った。
どこで会ったのかと記憶をたどると、マウイ島に来る飛行機で隣に座った人だった。
BOSEのヘッドホンが証拠だ。
機内で手に持っていたBOSEのヘッドホンなのだ。
あんな大きなヘッドホンをしてマラソンを走るつもりなのかな。

テーブルにゲーターレードとフルーツが置いてあった。
これはいい。
僕は、ハワイにきたときに良く食べる「ぶどう」をいくつか取って食べた。
フルーツの果糖は必要以上に糖分を摂取しないタイプの糖だ。
イッキにインシュリンが放出されることもない。
精製された糖分は、いくらでもカラダが摂取してしまうタイプの糖なので、たくさん摂取するとインシュリンがイッキに放出されて分解が加速し、糖分をとっても逆に低血糖状態になることがあるらしい。
それらしいことを言ったが、結局はフルーツがカラダにいいということである。

追加でぶどうをつかんで食べていたら、A−1さんが近くにいた。
ちょっと風邪を引いていることなど、しばらく雑談をしたあと、またA−1さんは業務に戻った。

僕はしばらくぶらぶらと歩き、そしてまたトイレに行った。

だんだん人が増えてきた。
日本の旅行代理店が主催している準備運動が始まった。
たくさんの人がコーチと同じ格好をして体操をしている。

僕はどんな体操をするのか見ていた。
この団体の体操が終わったら、同じような体操をしておこう。(笑)
そういえば、スキーをしていたころにスキースクールの近くに行って内容をこっそり聞いてあとでやっていたことがあったっけ。(せこいっ!)
そんなことを思い出した。

フルーツといっしょにゲーターレードがおいてあるので、それをもらいに行く。
水分補給をしておく。
そして、飲み終わったら、トイレに行く。
トイレを待つ人が増えている。
出場者のほとんどがこのスタート地点に集まっているのだろう。
ランナーを送ってくるバスの到着がなくなった。

人が道路に並びはじめた。
スタート地点まで集団で歩いていくのだろうか。

僕も列に並ぶと、遠くの方から音楽と火が上がっているのが見えた。
ファイヤーダンスか。
ハワイっぽい。



ひとりだけなので、華やかさはないが、ハワイっぽい雰囲気がある。(というかポリネシアン?)
ちょっと離れた場所にいたので、臨場感はない。
できれば近くで見たかったな。

ファイア−ダンスが終わると、スタート地点に向かって動き始めた。
だらだらと歩いているという速度である。




近くにいる人を見ると、誰かしらと会話しながら歩いている。
ひとりだけで参加している人は少ない。(ように見える?)
たくさんの人がいるのに、孤独を感じる。
といっても、それがイヤというわけではない。
僕はひとりで行動するのは苦にならない。
ひとりの方がいいときもある。

ランニング用の腕時計を見ると、そろそろスタートの時間になる。
日本で電波時計を見ながら時間を合わせてきたので、かなり正確なはず。

全体が動き出した。
国歌斉唱(アメリカのです)はなかったような気がする。(すでに終わっていた?)

スタートしたのかな?




まあいいや。

スター地点と思われる場所で、僕は腕時計のスタートボタンを押した。

マウイマラソンのスタートだ。

これから42キロ(26マイル)、どのようなことになるのかな。
今回は体調が悪いなかの出場なので、不安があった。
しかし、走り始めると、思っていたより悪く感じない。
いつものトレーニングで走っていた感じになっている。
脚が軽い。
早く走れそうだ。

あ、脚が軽いのか。

僕は、小出監督の本に書いてあったことを思い出した。
たしか「脚が軽いときは注意した方がいい。特に練習不足の場合などは、途中でオーバースピードに脚が耐えられなくて止まってしまうことがある」というようなコトが書かれていた。

ここでスピードを上げると、脚が止まる恐れがある。
体調が悪くて渡航前2週間くらい長距離を走っていなかったから。
体調が悪くならなければ、その前はきちんとトレーニングしていたので、良いタイムが期待できたのにと思った。

そんなことを考えてもなんにもならない。
今は、このマラソンをどのように走るかが問題なのだ。
過去のことは考えても仕方がない。

このカラダの感じだと、目標は1キロ6分程度で走ることを目指すのがよさそうだ。
目標はそれよりちょっと高いところにあったが、今の状況では目標の速度で走ると危険である。

マウイマラソンはマイルの表示なので、マイル換算をしなければならない。
今のうちに目標のマイル換算のタイムを考えよう。
陽が出て暑くなると、細かいことを考えるのがイヤになるから。
1キロ6分なら、1マイル(1.6キロ)を10分かな。(キロのときよりちょっと遅くなりますが、わかりやすいので採用しました)


スタートした直後は人との間隔が近いが、10分も走ると人がばらけて走りやすくなる。

空が明るくなってきた。
スタートしたときは真っ暗だったが、周りの景色が良く見える。
マウイマラソンの良いところは、景色がいいところ。
景色を見ながら、ペースを保ち走る。

気持ちがいい。



走りながらの撮影なので、映像がゆれます。ご容赦ください。


ハワイの空気の中、それも朝に走るのはいい。
空気もキレイだし、景色もいい。
ゆっくりと走っているので、カラダの負担もなく、快適だ。

給水所が見えてきた。
僕は脱水症状にならないように、給水所があるごとに水分補給をしようと決めている。

「ワラー(ウォーター)、ゲータレー(ゲーターレード)」という声が聞こえてくる。
僕は「ゲータレー」と言っている人のコップをもらう。



走りながらの撮影なので、映像がゆれます。ご容赦ください

マウイマラソンの給水は、コップを手渡ししてくれる。(例外もあります)
日本のマラソン大会は、テーブルにおいてあるコップを自分で取るタイプである。
手渡しの方がとりやすいが、コップを3つくらい取りたいとき(並んでいるコップを上から手を入れて、3つつかむ方法)は不向きだ。

ゲーターレードをもらい、コップの飲み口を円から縦の楕円に変えてから飲んだ。(走りながら飲む場合は、このようにした方が飲みやすいです)

おいしい。

コップをロードサイドに投げた。
僕の投げたコップを拾ってくれるボランティアの人に心の中で感謝をした。

どんどん空が明るくなる。
今日もいい天気だ。



レインボーその1。

かなり人がばらけた。
僕の前後の人が固定されていく。
同じ速度で走っている人だから。

日本人でやっているのを見たことがないのだけれど、走るのと歩くのを交互に時間を決めて繰り返している人がいる。

脚が痛いとかそういうのではなくて、タイマーの音が鳴ると走って、またタイマーの音が鳴ると歩くという方法なのだ。
こういう方法は有効なのだろうか。
僕は一定の速度で走る方がいいのだけれど。

海が見えてきた。
スタートしたしばらくしたところで、遠くに海が見えたのだけれど、近くに見える。

海側でない方の場所にA-1さんがいるのがわかった。

ムービーか写真を撮っている。
僕はカメラを取り出して、A-1さんを撮影した。

僕は、海を見ながら走った。
ハワイの海はいい。

そろそろ坂道にさしかかる。

マウイマラソンはほぼフラットなコースであるが、この場所だけアップダウンが続く。
以前、この坂道で必要以上に速度を上げてしまって、その後に脚が動かなくなったことがある。
脚のチカラは有限なのだが、ここで多くのチカラを使ってしまったのだ。
まだ、ハーフの距離も走っていないのに。

今回は、注意して走る。
上り坂を走るときは、速度をかなり落として脚に負担がかからないようにした。
下り坂は、歩幅を小さくして、脚にかかる衝撃を減らした。

しばらくすると、空にレインボーが出ていた。
レインボーに向かって走っていく。

この景色を見ながら走っていると、「マウイマラソン、最高!」という思いが出て来た。
すばらしい。
余裕のある速度で走っているのも、この「マウイマラソン、最高!」との思いになったのだろうと思う。

今回走ることができて、本当によかった。

数キロの間、抜いたり抜かれたりしている女性(日本人)がいた。
しばらく僕の前を走っていたのだけれど、この坂がキツいのか、前かがみになってのぼり坂を走っている。
おそらくレインボーには気づいていない。
なぜなら、こんなキレイなレインボーに気づいていたら、足元の道路なんか見ていないから。

彼女は、この上り坂で速度が落ちてきた。
僕が彼女を追い抜くときに、一瞬、僕の方を見たので、「レインボーが出ていますよ」と声をかけてみた。

「わー、すごい!」。



撮影中のことでした。

やはり気づいていなかったのだ。

そして、「ありがとうございます!」と、お礼を言われた。
僕はお知らせしただけでたいしたことをしたわけではない。(素直にありがとうという言葉を受け取っています)
本当にありがとうと言いたいのは、このハワイの自然だと思った。

僕はレインボーを見ながら走り、そして、そのレインボーの下をくぐるように走っていく。

下り坂にさしかかる。
この坂を下りると、平坦な道が続くのだ。
平坦になったところくらいが、ハーフの距離となる。
いままできたと同じだけこれから走ることになる。

今回は39キロ走というトレーニングを何回か行った。
そのおかげで、自分がどれくらいの位置にいて、あとどれくらい走るのかというのが、イメージできる。
過去2回のマウイマラソンでは、ハーフの距離を走ったときに、あとどれくらい走るのかというイメージ
がしにくく、「まだ半分か。いまでもキツいのに、これからまたハーフの距離を走るのか。たいへんだなぁ」というネガティブな気持ちなっていた。
しかし、今回は距離感を持っているので、走ることにうんざりしていない。

脚もしっかりしているし、どこにも痛みはない。
このままで走ることができたら、どこかでペースを上げてもいいかもしれない。

太陽が上ってきた。
気温がぐんぐん上がっているのがわかる。

マウイ島の気温は暑いことは暑いが、今年の日本は猛暑だったのでたいしてつらく感じない。
僕は猛暑の中でトレーニングをしてきたのだ。
「そのときの日本とマウイ、どっちが暑い?」と訊かれれば日本と答える。
それくらい今年の日本は暑かった。
マウイは風が気持ちよくふいていて、湿度も低い。
間違いなくマウイの方が走りやすい。

また、暑さ対策として、白い帽子と白いウェアを購入した。
シャツの色の違いだけでも、体感気温が大きく変わると思う。

5月にハーフマラソンを走ったとき、黒いウェアを着て失敗した。
天気がよく気温が高くなったのだが、黒いウェアが熱を吸収してしまい、暑くて思ったように走れなかったのだ。
その結果、タイムを大幅に落としてしまった。

その失敗はマウイマラソンにつながったと思うので、よかったと思う。
あそこで気づかなかったら、今回も同じシャツを着ていたかもしれない。

このあたりでアミノ酸を補給をしておこう。
ウェストポーチからアミノバイタル スーパースポーツを取り出して、飲んだ。
味は、あまりおいしくない。
これを飲んでおくと何かが違うのだろう。(よくわからないで飲んでいます。笑)
緊急水分補給用のポカリを取り出してひと口飲んで、口直しをした。


道路わきにランナーのカップル(アングロサクソン系)がいて、女性の方が下を向いている。
男性が心配そうに女性の背中をさすっている。

女性はゲータレードか胃液だかわからないような色をしたものを吐いるのが見えた。
苦しそうだ。

たぶんこの暑さのせいだろう。
そういえば、前回のマウイマラソンの時は、女性が倒れていたっけ。

この暑さの中でマラソンをするのは過酷なんだ。

しばらく走ると、救急車が走ってきた。
さっきの女性が乗るのかな。
無事だといいけれど。

給水所が見えてきた。
僕はゲータレードと水の両方をもらった。
ゲーターレードは水分補給用で、水はカラダを冷やすためにつかう。
シューズがぬれないように慎重に脚に水をかける。
この暑い場所で長い時間を走るのだから、脚はかなり熱を持つ。
水をかけてクールダウンさせるだけでもかなり違う。



今回は、ハーフ後にスピードが落ちていない。
前回は、ハーフ後に脚のチカラを使いすぎたため、速度がハーフ前と後ではかなりの差があった。
ハーフ前とハーフ後で速度が変わると、時間は経過したが距離を走っていないのでがっかりするのだ。
スピードが落ちていないので、時間あたりで走る距離が変わらない。
これはいい。
走った時間分、距離が進んでいる。

35キロくらいのところまで来た。
ここからが本当につらいところである。
しかし、脚の疲れは感じるが、いままでにないくらい状態がいい。

木がたくさんある道になった。
ちょっとした日陰がこんなに涼しいなんて。
改めてハワイの日差しの強さを感じる。



ラハイナの町に入っていくところで、ケータイを出してボタンをプッシュする。
走りながらなので、うまく押せない。
イスに座って応援している日本人女性から「どこに電話しているのですか?」と訊かれる。
この女性と男性は、前回、前々回の時に見たと思う。
ここに住んでいる人だ。

「ホテルにいる妻です。ここを曲がるときに電話する約束をしているのです」と、きっちりと回答した。
「そうですか。あと少しなのでがんばってください!」と励まされた。

いったいどんな回答を期待していたのだろうか。

妻に電話をかけて、状況(悪くないということ)を説明して、また電話をかける約束をして電話を切った。

ラハイナの町に入っていく。
ここにはいままでの道とは違い、観光客が多くいるところである。
多くの人が応援の声をかけてくれる。
目があった人には笑顔でうなずくようにしている。



中学生くらいの子たちが10〜15人くらいで集まっているのが見えた。
建物を見ると教会だった。
そうか日曜日だから教会に来るのか。
そんなことを思っていたら、その子たちがこちらを見て、なんやら話している。
近くに行くと、さらに声が大きくなった。
聞こえてくるのは、僕のゼッケン番号だ。
キリスト教において、僕のゼッケン番号は不吉な数字である。
日本人の僕は、もちろんなんにも感じない。

その子たちの方を向いて、おもいっきりワルっぽい「なにかをたくらんでいるような顔」をしてみた。
かなりの反響があった。(笑)

ラハイナを抜けて大きな道路に出る。
そこで、もう一度電話をすることにした。
ケータイのボタンを押すこともおっくうだ。
フルマラソンを走っていて、終盤になってから細かい操作をするのはめんどうである。

妻に場所を連絡してだいたいの時間を告げた。
残りの距離を直近のタイムを考えたものを話す。
そして、電話をするのはこれで最後ということを話した。
走りながらケータイをかけるのはもうやりたくない。
それくらい疲れているのだろうと思った。



前回はここからゴールまでがとても長く感じた。
しかし、今回は「ああ、もうすぐ終わっちゃうんだ」という気持ちになった。
快適に走ることができたんだ。

あと5キロくらい。
「ちょっと速度を上げてみようかな。」と思い、ピッチを早くした。
脚の負担は強くなるが、なんとかなりそうだ。

カアナパリに入る手前くらいで、急に右脚の膝の上あたりの筋肉が悲鳴をあげるように痛みを発した。
あと1キロから2キロくらいのところである。
「最後まで持つか?」とちょっと不安になった。
よかったのは、あと1キロから2キロくらいのところだということだ。
少し速度を落とす。
締め付けるような痛みだが、走れないことはない。
スピードを落としたせいか、何人かに抜かれた。
しかたない。

ゴールが見えてきた。

妻とムスメはどこかな?

ムスメといっしょにゴールをする予定になっている。
ゴール間際でムスメを見つけて、一緒に走るのだ。

妻とムスメを発見した。
ムスメに向かっておいでおいでと手招きをして、ムスメにくるように指示をした。



ムスメと一緒にてをつないで走る。

応援しているボランティアの少女たちから「oh!cute!」と声がかかる。
ムスメは気づいているかわからないけれど。

僕の名前を呼んでもらって、ゴールのゲートをくぐった。



ゴール。



今回も無事走りきることができた。

フィニッシャーメダルとコストコオリジナルの水をもらい、フルーツがある場所に行き、グレープをいれてあるコップをもらった。

ゴールシーンをビデオ撮影していた妻が来た。
「どうだった?」と訊く。
僕はいくつかのトピックスを説明して、そして「マウイマラソンは楽しい」と話した。

本当にこの大会はすばらしかった。

スポンサーが減っている(と思う)なか、経費を節約(計測チップを廃止)したりという努力をしている反面、ランナーのためになるように給水所は減らしていないしフルーツもちゃんと用意している。
いろいろ考えていると思う。

タイムが記載された紙をもらい、ホテルへ戻る。

歩いていると、「Congratulations!」と声をかけられる。
そういうことも、このマウイマラソンのいいところ。

ゆっくりと歩いてホテルに向かった。

これからは、プールの時間だ。

ホテルの部屋で少し休んで、プールに向かった。

部屋からプールのある方に向かっていった。
ムスメはこのプールに入る気満々だ。

このプールとプールサイドの雰囲気がなんか違う。
子どもがいないのだ。

「ここは大人のプールなのか?」と思い、水深を確認してみると、とても子どもが入れる深さではない。

ムスメに「ここは深くて入れないよ」というと、べそをかきはじめた。
すぐにプールに入りたくてしかたがないのだ。

妻が子どもでも入れるプールを探しに行くことにして、僕とムスメはここで待つことにした。

妻はなかなか戻ってこない。
ムスメは「おそすぎる!」と文句を言っている。

しかたがないので、ホテルの人をみつけて、「子どもの入れるプールはどこですか?」と尋ねた。
「このプールの向こう側にありますよ」という。
そちらの方に向かってゆっくりと歩いていく。
反対側から妻が戻ってきて、「あっちにあるみたい」という。
プールとは反対側に行っていたので、遅くなったようだ。

プールに着くと、子どもが遊んでいるのが見える。
子どもが遊んでいるといっても、6人くらいだ。
ハワイのリゾートホテルのプールの良いところは、すいていることだ。

ムスメと一緒にプールに入った。
走ってほてったカラダのクールダウンにちょうどいい。

子どもの入れるプールといっても、場所によっては子どもの身長より深いところがある。(子供用の浅いプールは併設されているが、そこでは満足しないので)
きちんと目を離さないで見ていないと大変なことになる。

プールの水は冷たいので、入る時間を考えないとムスメの体調が悪くなる恐れがある。
以前にムスメが気管支炎になってドクターズ・オン・コールにお世話になったことがある。

1時間を経過したところで、プールから出ることにした。

このホテルは、プールに併設しているバーがある。
ホテルから出ないで、このバービールやカクテルを飲んでプールライフを楽しむのもよさそうだ。
ムスメが小さいうちは、できそうもないけれど。

さて、次はロスドレスに行こう。
僕のマラソン、ムスメのプール、そして妻のロスドレス。

フルマラソンを走ったあとでもクルマを運転する気になるのは、きちんとトレーニングをしていたおかげだと思う。
いままでのマウイマラソンと比較すると、脚のダメージは少ない。

チェックインの時にパーキングが満車だったのでバレーパーキングにクルマがある。
ベルさんに札を渡してクルマを取って来てもらう。
チップを渡してクルマに乗り込んだ。
バレーパーキングも悪くない。

クルマに乗りホテルを出る。
まだマラソンのランナーが走っている(というか歩いている)。
ふらふらしているように見える。

すごいな。

時計を見ると、スタート時間から8時間くらい経過していた。

僕の走った時間の倍近くの時間を、この日差しの強いハワイで走っているのだ。
いまは太陽が高い位置にあるので、僕が走っていたときより気温が高いはず。
エアコンのきいた涼しい車内にいるので(さっきはプール)、今はどれくらい暑いのか実感することはないけど。

「あとちょっと。がんばれ!」と声を掛けたくなった。

マラソンで走ったコースをクルマで走る。
「よくこんな長い距離を走ったものだ」と、しみじみと思った。

マラソンを終えたので、かなり気分が軽くなっている。
自分で出場を決めたマラソンだが、走る前はプレッシャーがかかっているのだろう。

レインボーが出ている。
ハワイで見るレインボーは幸せな気分になる。

目的地のロスドレスまで、快適なドライブを楽しんだ。

ロスドレスに入ると、品物がたくさんあるのがわかった。
オアフ島のロスドレスの場合、入った瞬間に品物がない場合がある。
普通のお店なら品物が潤沢にある。
しかし、ロスドレスはストックがないというか、次の仕入れまで商品がない状態になる。
そのため、お店に商品があるとうれしくなる。

しばらく店を見たあと、セーフウェイに行ってビールを買うことにした。
マラソンを走ったので、ビール解禁になったのだ。

次は夕食を買おう。
昨日のL&Lドライブインのプレートもいいけれど、マウイ島ではマウイミックスプレートがお気に入りの店である。
昨日もここに来たかったが、マラソンのゼッケンをもらう時間に間に合うようにするためにスルーした。
マウイミックスプレートは、味も量も満足する。

このモールは少々寂れているようだ。
テナントが入っていないスペースがある。
マウイ島はオアフ島と違い、人の数がかなり少ない。
住んでいる人の数が違う。
オアフ島は都会。
マウイ島は田舎。
どちらもいい。

そろそろ帰ろう。
フィニッシャーズパーティに間に合わなくなっちゃう。

ロスドレスのためだけにレンタカーを借りているような日になった。(笑)

ホテルに戻り荷物をおいてフィニッシャーズパーティ会場であるウェスティンにてくてくと歩いて向かった。

風が強い。
その風は心地よい。
気温がもう少し低かったら、寒く感じるだろう。

パーティー会場に到着した。
ムスメと妻はトイレに行っているので僕だけ会場に入った。

「さて、ビールは」と見ると、おととしに見たバドワイザーのサーバーが見当たらない。
ビールが注がれておいてあるコップの前にビールの説明が書いてあった。

「地ビールだ」。

僕は嬉しくなって、2種類あるうちのひとつを手にとって飲んだ。
ほぼイッキ。(笑)
おいしい!
僕はハワイの地ビールが好きだ。
ハワイにきたときはコナブリューイングというハワイの地ビールを好んで飲んでいる。

もうひとつの方を手に取り、これもほぼイッキでの飲んだ。(笑)

どちらかというと最初に飲んだ方が好みなので、そのビールを手にとった。
ここからは、ちょっとゆっくり飲む。(笑)

妻とムスメはピザとジュースとってから戻ってきた。
僕もピザをもらおう。
そしてビールも。

ビールとピザを楽しみながら、表彰式を見ていた。
トップでゴールをする人のタイムは、僕のタイムの約半分だ。
すごいな。

表彰も終わり、人が引き上げていく。

僕はビールを取りに行きビールをもらい、イスに座り、オレンジ色の空を見ていた。
そして、ビールを飲みながら、「マウイマラソンはすばらしい」と思った。

次はいつ走れるのだろう。

来年からムスメが小学生になるので、平日に休む必要があるマウイマラソンは避けなければならない。

またいつか走る日を期待して、会場を後にした。

ホテルまでゆっくりと歩く。
途中で写真を撮る。

明日はなにをしようか。

ホテルの部屋に戻り、コナブリューイングの栓を抜いた。
ハワイを感じるビールの味だった。



滞在3日目へ